日本人の「姓」はいつから? ―名前に隠れた日中韓それぞれの家族観―
日本で今のように姓(苗字)をすべての人が持つようになったのは、明治時代になってからのことです。もともと「姓(かばね)」は、古代に貴族や豪族が使っていた家柄や身分を示すもので、庶民が自由に名乗れるものではありませんでした。武士の時代になってからは、地名にちなんだ「苗字(みょうじ)」を武士たちが名乗るようになりましたが、農民や町人は公式には名字を持たず、日常生活では名(名前)だけで呼ばれていました。
明治時代に「全国民が姓を持つ」時代に
大きな転機となったのは、1875年(明治8年)に明治政府が出した「平民苗字必称義務令」です。これにより、すべての国民に苗字を名乗ることが義務づけられ、日本人全員が正式に姓を持つようになりました。多くの人は自分の出身地や職業、自然などにちなんだ文字を選んで姓を作ったため、日本には現在、30万種以上もの多様な姓が存在しています。
中国の姓文化 ― 血統と祖先を重んじる
中国では姓は血統を表すもので、姓が同じであれば祖先を同じくする「同族」と見なす意識が今も強く残っています。結婚後も姓を変えない「夫婦別姓」が当然であり、子どもは通常、父親の姓を受け継ぎます。最近では、父母両方の姓を組み合わせた「複姓」も増えつつあります。
また、中国では同じ姓の者同士の結婚(同姓婚)は避けるべきものとされる文化があります。これは同じ姓は同じ祖先をもつ可能性があるため、倫理的・伝統的な観点から「近親婚」とみなされるおそれがあるからです。法律上は禁じられていませんが、現在でも一般に**「同姓同士の結婚は非常識」という意識が強く残っています。
韓国の姓文化 ― 出自と家系の重視
韓国でも、姓は血筋や本貫(家系の出身地)を表す重要な記号です。たとえば「金海金氏」や「慶州金氏」といったように、同じ「金」姓でも出自の違いで区別します。韓国も結婚しても姓を変えず、子どもは父親の姓を名乗るのが一般的です。特に祖先祭祀(チェサ)などの伝統が残る韓国では、家系を継ぐ意識が非常に強いといえるでしょう。
そして韓国では、同じ姓で同じ本貫(出自)を持つ者同士の結婚は、かつて法律で禁止されていたほど厳しく避けられてきました(1997年に憲法違反として廃止)。現在では法的には可能ですが、依然として「同姓同本貫婚」は敬遠される傾向にあり、家族や親戚の反対に遭うことも珍しくありません。
日本の夫婦同姓と、世界でも珍しい「改姓」制度
日本では「夫婦同姓」が法律で定められており、結婚に伴ってどちらかの姓に統一する必要があります。多くの場合、女性が男性の姓に改めるのが慣習となっており、実際に約95%以上が夫の姓を選んでいます。
しかしこの制度は、国際的に見ると極めて珍しいものです。多くの国では夫婦別姓が普通であり、結婚しても改姓するかどうかは自由です。日本のように「法律で夫婦が同姓を名乗らなければならない」と規定されている国は、先進国ではほとんどありません。
そのため、日本の制度はジェンダー平等や個人の尊厳とのバランスという点で国際的に注目されており、近年は「選択的夫婦別姓」を導入すべきという議論が高まっています。
姓名が映し出す、国ごとの家族観の違い
このように、姓という一見シンプルな文化にも、それぞれの国の歴史・法律・家族観が深く反映されています。日本では個人の自由や平等への意識が強まっている一方、中国や韓国では姓が血縁や家系の象徴として今も強く機能しています。名前は単なる記号ではなく、「自分は誰で、どこに属しているのか」を映し出す鏡です。姓名文化を通して、家族のかたちや社会の価値観を見つめ直すことができるかもしれません。
【中国語版】
日本人的“姓”是从什么时候开始的?
—从姓名文化看中日韩不同的家庭观念
1.日本的姓,从武士走向平民
现在日本人普遍拥有的“姓”(即“苗字”),其实是到了明治时代才全面普及的。在古代,“姓(かばね)”主要是贵族或豪族使用的,代表家族地位和身份,普通百姓是不能随便使用的。到了武士时代,武士们开始使用与领地相关的地名作为姓氏(如“上杉”“武田”等),但农民和商人并没有正式的姓,日常生活中只用名字(如“太郎”“弥三郎”)来称呼。
2.明治时代后,所有国民都要有姓
1875年(明治八年),明治政府发布了《平民苗字必称义务令》,规定所有国民都必须拥有姓氏。于是,大量民众根据自己居住的地名、职业、自然物等创立了新的姓氏。因此,今天的日本拥有超过30万个姓,是世界上姓氏种类最多的国家之一。
3.中国的姓氏文化——重视血统和祖先
中国的姓氏文化源远流长,姓不仅仅是一个符号,更代表家族血缘和祖先的传承。同姓之人被视为“同宗”,有着共同的祖先。在婚姻方面,结婚后仍保留各自的姓氏是社会常识,孩子一般随父姓。近年来,也有越来越多的父母选择将双方的姓氏组合成“复姓”(例如“王李”、“张赵”)来给孩子起名。
此外,中国传统上认为同姓之间结婚是不妥当的。虽然现在法律上不禁止同姓婚姻,但社会上仍普遍存在“同姓不婚”的观念,担心有近亲关系,甚至会被家族反对。
4.韩国的姓氏文化——强调出身和家系
韩国的姓氏种类较少(大约300种),但非常重视“本贯”——也就是祖先家族的起源地。例如同为“金”姓,有“金海金氏”“庆州金氏”等不同本贯,彼此视为不同家族。婚后女性依旧保留自己的姓,孩子则随父姓。韩国至今保留着祭祖(称为“祭祀”)等传统,家族延续的观念非常根深蒂固。
同时,韩国过去曾禁止“同姓同本贯”者结婚,直到1997年被裁定违宪才正式废除。即便如今法律允许,人们依然倾向于避免同姓同本贯结婚,很多家庭仍对此持保留态度。
5.日本的夫妇同姓制度,在世界上极为罕见
日本法律规定夫妻结婚后必须使用同一个姓氏,虽然可以选择夫或妻的姓,但约95%以上的家庭选择妻子改随丈夫的姓。这种制度在现代世界中非常少见。
在大多数国家,包括中国和韩国,夫妻是否改姓属于自由选择,法律并不强制统一姓氏。像日本这样法律上强制夫妻同姓的国家,几乎已经绝无仅有。
因此,日本的这一制度也引发了广泛讨论。很多人认为,它限制了个人身份认同与性别平等,不符合现代社会的价值观。目前,“选择性夫妇别姓”制度正在受到越来越多日本人的支持与呼吁。
6.姓名文化背后,是对“家庭”的不同理解
从姓氏的使用规则可以看出,中日韩三国在家庭观念上的差异。日本正在逐渐重视个体与平等;而中国和韩国则依然保留着姓氏与家族、祖先之间的强关联。
姓名,不只是一个称呼,更是一个人“属于谁”、“来自哪里”的文化印记。透过姓名文化,我们可以更深入理解每个国家对“家庭”“个体”与“传统”的看法。