
日本の賃貸オーナーは家賃を勝手に倍にできるのか ― 外国人オーナーも含めた法律上の考え方 ―
2025年初頭、東京都板橋区の築40年の賃貸マンションで、外国人(中国系企業)オーナーが家賃を従来の約7万円から19万円に引き上げる通知を住民に送ったという事例が大きな話題となりました。値上げ幅はなんと約2.5倍。高齢者を含む住民たちは突然の通知に戸惑い、困惑や不安が広がりました。
この件はメディアでも広く報道され、最終的にはオーナー側が謝罪と家賃引き上げの撤回を発表しました。これを機に「オーナーは家賃を勝手に倍にできるのか?」「外国人オーナーには別のルールがあるのか?」という疑問が、改めて注目されることになりました。
法律上の基本原則:国籍に関係なく日本法が適用
日本の法律(借地借家法)では、オーナーが入居者の同意なしに家賃を一方的に倍にすることはできません。これはオーナーの国籍に関係なく日本国内の賃貸契約には日本の法律が等しく適用されるため、日本人オーナーでも外国人オーナーでも同じルールが適用されます。
借地借家法第32条は、経済事情や近隣相場の変動などにより賃料の増額請求が可能であるとする一方で、そのためには「正当な事由」が必要であると明記しています。
正当な事由とは?
たとえば、以下のような事情が正当な事由に該当します。
・周辺の家賃相場と比べて明らかに低い場合
- ・固定資産税や建物維持費が大幅に増加した場合
- ・建物の大規模改修や設備更新で資産価値が上がった場合
ただし、こうした理由があっても、いきなり2倍や3倍にするような大幅な値上げは通常認められず、裁判でも妥当とは判断されないケースが大半です。さらに、「契約期間中は家賃を変更しない」といった特約が契約書にある場合、その期間中はオーナー側の増額請求自体が無効になります。
入居者の権利と対応策
仮にオーナーから「来月から家賃を倍にします」と一方的に通知されたとしても、入居者が同意しない限り、従来の家賃を支払い続けることができます。オーナーが納得できない場合には、家庭裁判所で調停や訴訟を起こし、「増額が妥当であること」を立証しなければなりません。
また、入居者側には供託制度という手段もあり、納得できない家賃請求に対して、現在の家賃を裁判所に預けることで法的義務を果たしつつ争うことが可能です。
外国人オーナーと文化的認識の違い
今回の板橋区の事例では、オーナーが「香港の家賃相場を参考にした」と語っており、不動産に対する文化的認識の違いがトラブルの背景にあることも指摘されています。たとえば中国や香港では、不動産が短期賃貸・オーナー優位の投資商品として扱われることが多く、契約更新のたびに家賃を大幅に上げることも珍しくありません。一方、日本では借主保護の意識が強く、家賃の急激な引き上げは法律や裁判所によって厳しく制限されるため、このギャップが問題を引き起こしやすいのです。
まとめ
- 家賃の大幅な値上げは、法律上「正当な事由」がなければ無効です。外国人オーナーにも日本の法律が等しく適用されます。入居者には拒否権があり、供託や調停などで対応可能です。
- 文化や商習慣の違いによるトラブルも増加傾向にあるが、法律が最優先されます。今後、外国人オーナーによる不動産所有はますます増加が予想されます。入居者としても契約内容をよく確認し、万一トラブルが発生した際には、冷静に対応し、必要に応じて法律の専門家に相談することが、安心した住まいを守る第一歩です。
【中国語版】
在日本,房东可以擅自将房租提高至原来的两倍吗?
—包括外国房东在内的法律观点
板桥区房租上涨2.5倍的风波
2025年初,东京都板桥区一栋建成超过40年的出租公寓发生了一起引发广泛关注的事件:外国人房东(中国系企业)向租户发出通知,表示将房租从原本的约7万日元上调至19万日元,涨幅约为2.5倍。许多租户为老年人,面对突如其来的通知感到困惑和不安。
这件事被媒体广泛报道,最终房东方面出面致歉并宣布撤回涨租决定。然而,这也引发了人们对于“房东是否可以擅自大幅提高房租?”“外国房东是否适用不同规则?”等问题的关注。
法律上的基本原则:不论国籍,日本法律一视同仁
根据日本的《借地借家法》,房东不得在未经租户同意的情况下,单方面将房租提高至原来的两倍。
这一原则适用于所有在日本境内的租赁合同,无论房东是日本人还是外国人,均受相同法律规范的约束。
该法律第32条规定,在经济情况变化或附近租金水平变化的情况下,房东可以申请调整租金,但必须具备“正当理由”。
什么是“正当理由”?
以下情况有可能被视为“正当理由”:
- 与周边租金相比,当前租金明显偏低
- 固定资产税或建筑维护费用显著上升
- 建筑经过大规模翻修或设备升级后提升了价值
但即便具备这些理由,若一次性将房租提高两倍或三倍,通常被认为过于极端,不会被法院认可。
此外,如果租赁合同中写明“合同期间内不变更租金”等条款,那么在该期间内,房东提出涨租请求也是无效的。
租户的权利与应对方式
即使房东单方面通知“下个月起房租涨为两倍”,只要租户不同意,仍可继续按原租金支付房租。
若房东坚持,需向家庭法院申请调解或提起诉讼,并由法院判断涨租是否合理。
租户也可以利用**“供托制度”**,即将原租金交由法院保管,在履行支付义务的同时与房东进行法律抗争。
外国房东与文化认知差异
在板桥区的这一案例中,房东曾表示“参考了香港的房租行情”,这表明对房地产的文化认知差异也是引发此次问题的背景之一。
例如在中国或香港,房地产常被视为一种短期租赁、房东优势明显的投资商品,每次续约都可能大幅调涨房租并不罕见。
但在日本,租户权益受到保护,房租的大幅上涨受到法律和法院的严格限制,因此这种文化差异容易造成误解与纠纷。
总结
- 大幅涨租若无“正当理由”,在法律上是无效的
- 日本法律适用于所有房东,包括外国人
- 租户拥有拒绝权利,可通过供托或调解方式应对
- 文化与商业习惯差异导致的纠纷增多,但法律优先
今后,外国人投资日本不动产的情况预计将进一步增加。
作为租户,也应仔细确认合同内容,若发生纠纷,务必冷静应对,必要时及时咨询法律专家,这将是保障安心居住的第一步。